函館市の五稜郭タワーには、総髪で軍服とブーツを身に着けながら、刀を差している人物の像があります。旧幕府軍の一員として函館戦争を戦った土方歳三の像で、モデルとなったのが有名な一枚の肖像写真です。
この写真は、土方の義兄である多摩の佐藤彦五郎の元に手紙と共に届けられたもので、土方が写真等を託したのは側近の少年だった市村鉄之助だったそうです。土方は、市村少年の命を救うため、伝達役をあえて命じたとされます。
肖像写真の土方は、まるでスタイリストがいたかのように、ポーズの取り方や軍服の着こなし方がとても様になっています。想像の域を超えませんが、おそらく鬼の副長だった新選組の京都時代とは人が変わったような雰囲気だったと思います。
函館戦争という明日をも知らない戦いの日々の中で、あえて肖像写真を撮影し、それを近親者に届けさせた土方。農民出身の自分が、幕臣となって戦い抜いたという「誇らしげな姿」を見せたかったのではないでしょうか。
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