唱歌「鎌倉」をご存知でしょうか? そこに「稲村ケ崎名将の剣投ぜし古戦場」という歌詞があります。小学生の頃、歌は歌えたのに歌詞の意味がさっぱり分からなかったのですが、これは鎌倉幕府を倒した新田義貞の故事からきていたのです。
義貞は、足利尊氏と呼応して、鎌倉幕府の最大権力者・北条氏の打倒を企てます。関東各地で軍勢を増やし、北条方を次々に破っていった勢いで鎌倉への侵入を図ろうとしました。ですが、海と山に囲まれた鎌倉は難攻不落の地だったのです。
稲村ケ崎に来た義貞は、鎌倉への突破口が欲しいと願い、海に剣を投げ入れて祈願しました。すると潮がみるみるうちに引き、浅瀬が出来たため、義貞の軍勢が鎌倉へ突入できました。この戦いで北条高時ら一族は自刃して滅亡するのです。
新田家と足利家は源氏の一門でしたが、鎌倉幕府で政権の中枢にいた足利家と比べ、新田家は不遇だったとされます。義貞は「何が何でも自分の手で幕府を倒す」という意志が強く、それが唱歌「鎌倉」の故事を生んだのかもしれません。