大河ドラマ「光る君へ」が、12月15日の放送をもって終了いたしました。平安時代という大河ではなじみの薄い時代のドラマでしたが、とても興味深く見させていただき、スタッフや俳優さんたちに感謝の気持ちでいっぱいです。
正直な話、この作品の放送が決まった時に「紫式部が主役じゃなあ・・・」と内心ガッカリした覚えがあります。源氏物語をはじめとする平安文学に関心が薄かったこともあったため、率直にそう思ってしまったのです。
おまけに平安時代は私にとって、己の知識が乏しい時代でもありました。大河ドラマなどの影響もあり、戦国時代と幕末維新に興味が集中する一方、平安時代はとっつきにくく、分かりづらいなと思い込んでいたわけです。
「光る君へ」は、紫式部と藤原道長の人間関係をメインにしたドラマとしてスタートを切ってくれたおかげで、すんなりと入り込むことができました。大石静さんの脚本の素晴らしさに惹かれたというのもあったと思います。
ドラマにハマっていくうちに、紫式部日記や道長の御堂関白記、藤原実資の小右記などの読み下し本や、時代考証の倉本一宏さんらの平安時代研究書を何冊も読み、平安時代そのものへの理解も深めていきました。
「光る君へ」は、脚本の大石さんによる独自の解釈の部分も多かったと思います。ただ、極端に史実から逸脱することもなく、紫式部(まひろ)と藤原道長の生涯を見事に描き切ったという感じがしました。
よくよく考えれば、「まひろは不倫をした挙句、不倫相手の子供を産んだ」「道長は不倫相手のまひろを自分の娘のお世話役にした」という、現代劇に例えるとかなりドロドロした人間関係が描かれていたわけですよね(笑)
それから、後世の人々がライバルとみなした紫式部と清少納言との関係性を、古い友人同士という形にしたのも面白かったですし、まひろの家族や仕える人たち(いとや乙丸)のファミリーストーリーもとても楽しめました。
戦国時代や幕末は、なまじ知り過ぎているだけに、ドラマによっては「ここは違うんじゃないか」という先入観で見てしまいがちですが、知識の乏しい平安時代だったからこそ、先読みをせずにドラマに没頭できたのかもしれません。
最終回は、前半で登場人物がそれぞれの生涯を回想していくという描写が続き、後半は臨終間近の道長をまひろが見舞うシーンを時間をかけて描きました。その道長の遺志を引き継ぐ彰子の一条皇統と道長家を守り抜く宣言も印象的でした。
そしてラストシーンは、旅に出たまひろが武者姿を見て「嵐がくるわ」とつぶやいて終わるという演出。武士の時代がやって来るまでには、まだ150年以上も先のことになるのですが、確実に武士が台頭しつつあることを示唆しています。
「光る君へ」完結です! 主演の吉高由里子さんはじめ、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、改めましてありがとうございました。