22日放送の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、奥州に逃れた源義経が討伐されるという悲劇的なストーリーが描かれました。ラストには、心ならずも弟を討たねばならなかった兄・頼朝が義経の首に語り掛け、慟哭するシーンもありました。
義経にとって不運だったのは、庇護者であり、実力者でもあった藤原秀衡が亡くなってしまい、奥州藤原氏が一枚岩でなくなってしまったことです。秀衡がもう数年生きていれば、義経の運命も変わっていたかもしれません。
45分のドラマの中で義経は様々な顔を見せました。訪ねてきた北条義時に対し、悟りきったように「農民になる」と語るシーン、静御前の消息を聞いて怒りを爆発させるシーン、妻の里を衝動的に刺し殺してしまうシーン。
そして藤原泰衡の軍勢に館を囲まれた場面では、義時に鎌倉攻撃の軍略を自信満々に語り、弁慶が敵兵を食い止めている様子を嬉々として眺める・・・。菅田将暉さんの演技によって、喜怒哀楽の激しい人間味あふれる義経像が描かれたのです。
捕らえられた静御前が、頼朝や北条政子の前で舞いを見せる有名なシーンでは、はじめは身元を悟られないよう、わざと下手に舞うのですが、義経への思いに覚悟を決めた静御前は「しずやしず」と歌いながら、見事な舞いを見せつけます。
その姿に政子は「女の覚悟」を見てとります。やがて、政子自身が何度も覚悟を決めなければならない場面で出くわしますが、この時の静御前の姿を自分に置き換えて、難局を乗り切っていたのかもしれません。
そしてこの回は、北条義時も今までとは違う人物像を見せています。先の先を見通す頼朝や深慮遠謀の人である大江広元を見ながら、鎌倉を守るためには謀略も必要だと悟り、奥州藤原氏を滅ぼすための布石を打っていくのです。
頼朝死去後の源氏滅亡、御家人たちの権力闘争を勝ち抜き、北条氏の全盛期を作り上げていった義時の起点になったのが、この奥州派遣だったのではないかと思います。次回以降、どんな義時を見せてくれるのか、小栗旬さんの演技も楽しみです。