note版「歴史・人物伝~松陰先生編」の番外コラムを一括掲載します。
佐久間象山門下のスゴイ人材たち
前回(第4回)の松陰先生編で、吉田松陰の師である佐久間象山について触れました。当時最高の知識人だった象山の元には、たくさんの優秀な人物が教えを請いに集まっていたのです。
主な人物では、勝海舟、吉田松陰、小林虎三郎、宮部鼎蔵、河井継之助、坂本龍馬、橋本佐内、山本覚馬、真木和泉・・・。名前を挙げるだけでもそうそうたる面々で、まるで幕末のオールスター戦のようです(笑)
また、当時の江戸には、桂小五郎(木戸孝允)や西郷隆盛もいました。桂は吉田松陰と同郷であり、西郷も橋本佐内とは懇意でしたので、「他の人物との交流があったかもしれない」と思うと、ワクワクします。
勝は幕臣として徳川家を守るために最後まで尽力しました。河井と小林は長岡藩士で後に新政府軍と激闘を繰り広げます。山本は会津藩士で、妹の八重は会津戦争で戦っています。
松陰と橋本は幕政改革を訴えながら安政の大獄で処刑されます。宮部や真木は幕府を倒すという志を持った人物でした。倒幕の原動力である薩長同盟には桂と西郷がかかわり、坂本が両者を結び付けました。
松陰の話を書く上で、改めて調べてみると、象山門下はスゴイ人材の宝庫だったことが分かりました。最後に歴史好きの欲深き夢を一つ。「象山門下をドラマ化し、主役級が居並ぶ壮大な人物群像劇を見たい」。
ドラマ「蒼天の夢」のこと
歴史・人物伝~松陰先生編の番外コラムとして、2000年にNHKで放送されたドラマ「蒼天の夢 松陰と晋作・新世紀への挑戦」を紹介します。
このドラマは、司馬遼太郎さんの「世に棲む日日」を原作としており、吉田松陰とその弟子の高杉晋作の生き様を描きました。ドラマの基軸になっているのが松下村塾と松陰の家族です。
松陰役は歌舞伎の中村芝翫(当時橋之助)さん、晋作役は能楽師の野村萬斎さんが演じ、最初は反発していた晋作が徐々に松陰に心酔し、やがて松陰の志を継いで維新回天を成し遂げていくというストーリーです。
ドラマで印象に残ったのは、松陰が「雲がかかっていても、その上には常に青空が広がっている」と語るシーンです。青空はすなわち「松陰の揺るぎない信念」で、それは不変だということを言いたかったのでしょう。
その「揺るぎない信念」こそが、松下村塾に多くの人材を呼び、育てていく原動力になりました。一方で、「揺るぎない信念」ゆえに幕府にも本音で相対し、その結果処刑されてしまうのです。
ひとり旅で訪れた松下村塾のこと
松下村塾のある山口県萩市には、これまでに2回ひとり旅で訪れています。幕末の歴史ファンにとって、街全体が見どころばかりという萩は、何度でも足を運びたい旅先の一つです。
初めて訪れたのは1992年11月でした。高杉晋作や久坂玄瑞らが学び、歴史にその名を残す松下村塾が、当時そのままの建物として残っていたことに深い感動を覚えました。
当時書いた旅のエッセイに「この旅行のあと、さらに松陰について学んだ私なので、次にここに来るときは、もう一段違った感慨を持つに違いない」と書き記していました。ただ、その機会はなかなか訪れません(苦笑)
ようやく2回目の来訪となったのが2009年10月、実に17年ぶりでした。その時のエッセイには「新鮮な感動というのは薄れる。しかし、何度見ても松下村塾が素晴らしいことには変わりはない」と書いています。
松陰の歴史をろう人形で振り返る「吉田松陰歴史館」も2度目の見学となりました。初来訪以降、幕末史の知識を蓄えてきた私は、すべての再現場面を思い描くことができたのです。
ちょうどその時、遺墨などを収蔵展示する「松陰神社宝物殿至誠館」が完成間近でした。一足違いで見学できず、「ここは絶対見に来なければならない」と誓い、松下村塾を後にした覚えがあります。
世田谷の松陰神社をお参りしました
東京23区内にあって、ローカル電車の雰囲気たっぷりの東急世田谷線に、松陰神社前という駅があります。駅から商店街を5分ほど歩くと、吉田松陰を祀る松陰神社に着きます。
松陰神社一帯は、毛利家藩主の別邸があった場所でしたが、明治15年に松陰門下によって神社が建立されました。以後、御祭神の吉田松陰にちなんで、学問の神様として多くの崇敬を集めています。
境内には、松陰はじめ安政の大獄の投獄者のほか、弟子であり同志だった野村靖の墓があります。また、松下村塾のレプリカも建てられており、萩市に行かなくても、その雰囲気が感じられます。
私は、大河ドラマ「花燃ゆ」が放送された2015年9月に参拝させていただきました。神社独特の神々しさに加え、幕末の革命に命を捧げてきた人々の熱い思いが伝わってくるような気がしました。
商店街に、吉田松陰を語るコミュニティースペース「松下村塾学び館」があり、帰りに立ち寄ってみました。松陰に関する書物など、コアかつレアなグッズが置かれており、興味深く見せていただきました。
店番をしていた若者と話をしたら、彼は私と同郷のうえ、高校の後輩だったことにお互いビックリ(笑) これも、松陰先生が導いて下さった縁だと思っています。
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